2037年
政府は、日本の深刻な少子化問題・日本人の身体能力の低下問題を解決すべく、
新しい取り組みをはじめた
それは、外見や性格、ステータスに関わらず、
遺伝子の相性を一番に重視し、より健康的で強い子孫を作れるよう
自動的に相手を選別するシステムだ
そうして奥手な日本人の恋のはじまりをサポートするのだ
もちろん、選別された相手を受け入れるかどうかは任意である
方法は、簡単
坊主頭に品種改良された小さなワニをのせるのだ
あるあたたかな日の朝であった
聡子は、ホームで気になる男性を見つけ、後に並ぶ
まだ少し違和感の残る小さなワニの尻尾を
サッと撫で付け 整える
私のワニがこの男性を選んでくれたら、何て声をかけようかしら。。。
そんな妄想をしながら、電車に乗り込む
さりげなく、ごく自然に、彼の隣に立つ
横目でチラチラと観察してみる
頭だけでなく眉毛まで剃りあげているが
無表情でも絵になる端正な顔立ちは
聡子の好みである
“ パカッ ”
聞き慣れない音が頭上でする。。。
ワニが口を開けるのは、マッチングの合図だ
聡子の妄想が現実になったのだ
心臓のドクンドクンという大きな音で、周りの音が聞こえない
頭がカーッと熱くなるのと同時に、はっとする
何か言わなければ
最初のひと言はやはり「はじめまして」がいい
清楚な声を出せるだろうか? よし、大丈夫 いける!
聡子は覚悟を決めた
聡子「ラッキー!」
妙に弾んだ聡子の声が響いた
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